認知症の中核症状である記憶や認知の障害、また認知症に伴う行動と心理症状の治療を行っています。
患者様に対する精神療法や薬物療法に加えて、介護するご家族の悩みや不安を軽減するための情報提供やアドバイスにも力を入れています。
認知症の症状は、中核症状とよばれる記憶力や物事を認識したり実行したりする能力の障害と周辺症状とよばれる中核症状以外の精神症状に分けられます。
周辺症状は最近「認知症の行動・心理症状:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia(BPSD)」と呼ばれるようになりました。
認知症の患者様に頻繁にみられる知覚、思考内容、気分または行動の障害による症状です。
さらに、ごく軽度の意識障害である「せん妄」や神経障害として「歩行障害」「嚥下障害」「膀胱直腸障害」なども認知症の患者様には出現します。
「せん妄」は夕方から夜間に出現することが多く「夜間せん妄」とよばれることもあります。急に人格が変わったように怒りだしたり、興奮したりして、話しかけても言うことを聞いてくれません。御家族が対応に苦慮する症状です。
膀胱直腸障害も排泄にかかわる問題なので、失敗してしまったり汚してしまったりして、御自宅での対応が難しくなる症状の一つです。
認知症には様々な原因疾患があります。「アルツハイマー型認知症」が有名ですが、それ以外にも原因疾患はあり、それぞれの原因疾患によって治療法が異なります。
内科的治療、脳外科手術で治る認知症もあります。
認知症を疑ったら認知症専門医療機関への受診が勧められているのは、治療可能な認知症を見逃さないことにあります。
神経変性疾患 | アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症 など |
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脳血管性認知症 | 多発梗塞性認知症、脳出血性脳血管性認知症、脳梗塞後の認知症 など |
中枢神経系感染症 | 単純ヘルペス脳炎、髄膜炎、クロイツフェルト・ヤコブ病 など |
他の中枢神経系疾患 | 脳腫瘍、正常圧水頭症、頭部外傷 など |
身体疾患に基づく認知症 | 代謝性疾患(肝疾患、腎疾患など)、低酸素症(心不全、肺疾患など) など |
高齢の方は、高血圧症や動脈硬化、糖尿病や骨粗鬆症などのいわゆる老年病にかかっている割合が高い傾向にあります。
まったく薬を服用していない方のほうが、むしろ少ないのではないでしょうか。
こうした高齢の方が認知症になるわけですから、当院受診時に多くの方が認知症に対する薬以外にさまざまな薬を処方されています。
したがって認知症の患者様の治療には、認知症の精神症状に対応する精神科医と老年病に対応する老年病専門医が同時に必要になります。
飯能老年病センターでは、すべての入院患者様に老年病学専門の内科医と老年精神医学専門の精神科医が、それぞれ担当について診療にあたります。 このような診療体制をとっているのは全国的にも珍しい病院です。
認知症になると身体的な不具合があっても、それを適切に表現する能力が低下していたり、痛みを感じる神経自体が鈍くなっていて、 あまり痛みを感じなかったりすることもあり、肺炎や腸閉塞などの内科的合併症を引き起こしてしまうことが少なくありません。
飯能老年病センターでは、患者様の声にしっかり耳を傾け、言葉以外の表情や動作などの患者様のサインを見落とさないように注意して日々の診療にあたっています。
飯能老年病センターでは、内科合併症の患者様を積極的に受け入れています。
内科合併症があるために精神科病院への入院が断られてしまう認知症の患者様、また認知症の精神症状があるために内科病院への入院が断られてしまう内科合併症をもつ患者様、 さらには高齢というだけで入院を断られてしまう患者様、こうした方々に適切な医療を受けていただくために当院は設立されました。
内科、精神科、皮膚科、放射線科の医師が一つの医局で、緊密に患者様の情報交換しながら、患者様の治療にあたっています。 看護課、栄養科、作業療法科、薬局など院内の各部署とのミーティングも頻回に行っており、チームプレイで一人の患者様の治療を行っています。