第31回日本老年精神医学会に参加してきました。
今回は会期2016年6月23日~6月24日、金沢歌劇座で開催されました。
テーマは「安心・安全で豊かな老年期を支援する―サクセスフルエイジングのための精神科医療―」でした。
認知症関連のシンポジウムに参加しました。印象に残った発表を紹介します。
まずは「認知症ちえのわnetの構築と運用」です。
大阪大学の数井裕光先生の発表でした。
シンポジウム「BPSD治療の新展開」の発表の一つです。
BPSDは、Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia(認知症の行動・心理症状)の略です。
BPSDに対する様々な対応法が、ネット上や本で紹介されていますが、
その対応法が本当に有効なのかどうかは、今まで検証されることはありませんでした。
そこで、ネット上で認知症に関わる多くの人の経験を集め、有効な対応法を明らかにする仕組みが考案されました。2016年7月から運用が始まったばかりです。
「認知症ちえのわnet」でケア体験のカテゴリ別集計結果をクリックすると、
うまくいった対応方法とうまくいかなかった対応方法が載っています。
まだ始まったばかりのシステムで登録件数が少ないのですが、日々の認知症介護の参考になります。
是非利用してください。
認知症と睡眠障害との関連の発表も勉強になりました。
大阪大学の足立浩祥先生の「睡眠障害の視点からみたBPSDの予防と介入」では、
不眠によってアミロイドβの蓄積が促されたり、神経変性過程に悪影響を与えること。
睡眠障害による認知症の進展・悪化により、
さらに睡眠障害が悪化するという悪循環に陥っている患者様が多いことから、
認知症者の睡眠障害をきちんと治療することの重要性が示されました。
高齢者の睡眠障害が専門の大川匡子先生の「高齢者・認知症者の睡眠障害―治療と予防にむけて―」では、
具体的にどのような治療が必要か、という発表でした。
ここに大川先生の「高齢者・認知症者の睡眠障害治療の原則」を紹介します。
1) 昼間のQOLを高めることを目標とした生活習慣の調整
2) 睡眠制限療法、筋弛緩治療などの精神・行動療法
3) 薬物療法では現在、ベンゾジアゼピン・非ベンゾジアゼピン系、メラトニン系、オレキシン系の3種があげられる。それぞれの特性を知って適正に使用する
医局Y.M