第109回日本精神神経学会学術総会 -その1-の続きです。
第2日目の「認知症2(口演)」では、香川大学医学部附属病院精神神経医学講座の樋笠直哉先生の「メマンチン導入による認知症患者の睡眠構造の改善例についての検討」を説明します。メマンチン(メマリー)は、抗認知症薬ですが、鎮静作用もあると言われています。
メマンチンを服用することによって、中途覚醒回数が平均8.75回から3.08回に減少したそうです。非レム睡眠Ⅱ・Ⅲ+Ⅳ期(深い睡眠)が増加したそうです。これは、PLM指数(睡眠中1時間あたりの運動数)が減少したことが睡眠構造に良い影響を及ぼしていたと考察していました。
「薬物療法2(ポスター)」では、兵庫県加西市の市立加西病院精神科医の松田耕平先生の「ラメルテオンのせん妄に対する有用性」という発表がありました。第一日目に引き続き、ラメルテオン(ロゼレム)の話題です。
入院中にせん妄を呈した45名の高齢者にラメルテオンを処方したところ、特に他の精神安定剤を服用していないラメルテオン単独群8名でせん妄が改善し、他の精神安定剤を服用している併用群でも50%が精神安定剤を減量できたそうです。このような結果から高齢者のせん妄に対してラメルテオンが非常に有用であると考察していました。
「認知症2(ポスター)」では、大阪府豊中市のさわ病院の山本誉麿先生の「当院における認知症疾患医療センターの取り組みと認知症患者受け入れの動向」が参考になりました。大阪府豊中市では中央地域包括支援センターが「認知症医療・福祉連携 おたすけマップ」という8ページの冊子を作成し配布しています。冊子の実物を見ましたが、非常によくできています。
「これって認知症?」
「認知症を支える仕組み」
「高齢者や認知症の相談窓口」
「認知症の相談ができる診療所☆専門の診療所☆認知症の検査・治療ができる病院」
などの項目があり、コンパクトながら分かりやすく説明しています。こうした冊子を全国の地方自治体が作成し配布すると良いのでしょうが、熱心な自治体とそうでない自治体があるというのが、今の日本の現状です。
福岡国際会議場は海のそばにあります。窓から韓国の釜山港と博多港を往復する客船「ニューかめりあ」が見えました。その前には海上自衛隊の船が泊まっていました。福岡はアジアの玄関口であると同時に最前線なのですね。
医局Y.M
第109回日本精神神経学会学術総会 -その3-に続きます。